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AJS名誉会長荒井伸也コラム

≪現場≫を求めて(その3)

Network2015年6月号掲載記事より
商品のむずかしい在庫管理

 スーパーマーケットの店舗に品揃えされているのは、1万品目程度だろう。そのそれぞれが、数十個という程度の数量で、在庫されている。つまり、商品の数にして、一つの店舗に、数十万個もある。

 いずれも日常生活で使ったり、食べたりしている、誰でも知っている、ありふれた商品ばかりで、理解することのむずかしい商品はない。

 それなのに、スーパーマーケットの在庫管理がむずかしいのは、それら多数の商品を、売場に陳列しておくことのできる期間が、かなり短いというところにある。

 食品に限って見れば、最も日保ちのいいビン詰や缶詰でも、せいぜい2年間である。肉・魚・野菜・惣菜などは、いい状態(温度・湿度など)に置いたとしても3日間程度だが、実際は、そんなに長期間在庫していない。

 在庫期間1日以下というものも多数あるが、モノによっては、鮮度管理の点から、1日どころか、時間単位で管理しなければならない商品もある。

 たとえば、ニラは、「時間」という単位で傷む。

 白菜・キャベツなど葉菜の切り口も、切って数時間も経てば、錆(さび)色に変色してしまい、商品の動きが鈍く(売れなく)なる。それを避けようとして、多くの店で、葉菜の軸の切り口を、数時間ごとに新しく切り直す作業をしている。

 野菜は植物だから生きている。生きていれば、成長する。しかも、わずかでも紫外線の来る方向を目指して伸びる。売場では天井照明の方向に育つし、後方作業場の冷蔵庫の中でも、天井のわずかな光に向けて成長する。だから、冷蔵庫の中は十分加湿したうえで低温度帯に保ち、庫内は極端に暗くしてある。あたかも野菜が、畑で寒い夜中に眠っているような状態を保っているのである。

 生肉は、たちまちに変色する。

 生肉の表面の色は、切った直後より、何分か経ったあとのほうが、おいしそうに見える。空気中の酸素に触れて発色するのだという。その後、徐々に鈍い色になっていき、黒ずんでくると、商品価値はたちまちに落ちていく。

 生魚の鮮度がよくなければならないということは、日本人なら誰でも知っている。なかでも、生のまま食するサシミには、最高の鮮度が要求される。

店が“いい状態”であり続けるには

 《いいスーパーマーケットである》ためには、《これらの商品のすべてがいい状態にあること》を、店側が保証しなければならない。長年にわたって、いろいろな企業や店舗での数限りない試行錯誤があったに違いないし、単に経験だけが頼りではなく、動植物の生理学の研究成果も取り入れられて、最終的にノウハウとして確立されてきたのだが、それら知識が、店舗で活用されるカギは、店舗のリーダーである店長が握っている。理由は簡単明瞭、スーパーマーケットの売場が《現場》だからである。スーパーマーケット・チェーンに関する日本の議論では、そのことが十分に理解されているとは言い難い。

 すでに書いたとおり、現場である店舗は、物理的な存在として、実際にそこにあり、商品もまた物理的存在として、実際にそこにある。すべてのことが、物理的存在として現場にあるのである。だから、店長がリアルタイムで(いつも、その場で)、《現場である店舗》の問題点を見抜くことによって、店は《いい状態》であり続ける。逆に言えば、店長の目が現場に届かなくなった途端に、店は《劣化》してしまうのである。  店長こそ、スーパーマーケットの要である。

店長が店舗のすべてを実際に見る

 その店長が、《現場を見る目》を身につけるには、どうしたらいいだろうか。

 商品や売場や加工作業に関する知識が有用であることは言うまでもない。同業他社の多くの店を観察することも役立つだろうし、消費者の買物行動を科学的に調査してみるべきだろう。しかし、いかなる方法をとろうとも、最終的に有効なのは、店長が、自らすべての商品を完全にチェックすることである。

 方法は、きわめて簡単。店舗(スーパーマーケット)のすべてを、店長が一つひとつ、実際に見る。まさに、文字どおり、店舗のすべてを一つひとつ、実際に見るということなのだが、具体的に書けば、次のとおりだ。

 店長は、まず、店(建物)とその周辺を、全体として見る。そのあとで、店(売場)の入口から店内を観察し、商品を一つひとつ、手にとって仔細(しさい)に観察する。もちろん、訪店のたびにすべての商品を手にとることはできないが、《すべての商品を手にとるほどに》《具体的に細かく》観察するのである。

 まず、青果売場から始まる入口に立って、店内を俯瞰する。店長の目には、整列したレジ、開いているレジの前に並んだ客、青果売場、その先に続く通路、などが映る。その情景がいつもどおりの《見慣れたもの》であればいい。情景とは、具体的には、買物客の姿や動き、見渡せる範囲の商品陳列のカタチや色彩などである。

会社の全員に“現場”が見えるように

 私自身のスーパーマーケット運営の体験によれば、私がトップであった数十年の間には、情景が《見慣れたもの》でなかったことが、何度もあった。

 たとえば、第一次オイルショック直後や物不足パニックの最中などで、そうした時には、売場を眺めた瞬間に異様な雰囲気があった。客の背中からイライラが読み取れたし、その動きは不自然で、ゆったり、悠々とショッピングを楽しんではいなかった。

 通常、店舗巡回では、私は主通路沿いに店内を回る。買物客よりかなり速足で歩く。目は、基本的には、陳列された商品を見てゆく。何度も何度も店を見て慣れた結果であろう、かなりのスピードで通路を回っていても、何か、いつもと違うことがあると、目に飛び込んでくる。

 変なパッケージがある!
 見慣れない商品がある!
 異物ではないか!
 POPの文字数が、読む気を失わせるほど多い!
 ……などなど。

 当然のことながら、店長が自店を見る目もまったく同じだ。  こうした《現場》がトップの目に映って見えるようになると、会社中の人にも《現場》が見えてくる。私自身の体験としては、それが、スーパーマーケットとしてのわが社が《よくなる》ということであった。 (終)



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